はり灸ってどんなことするの?③四診法

いよいよ実際の鍼灸の手順のご説明に入ります。

経絡治療では、「望聞問切(ぼうぶんもんせつ)」から成る四診法で得た情報を、五行に分類し、不調がどの経絡の変動によるものなのかを考え、「証(あかし)」を立て、施術方針を決めます。

以下がすべてではなく、また国や流派、漢方薬の世界などと違いがあることがありますし、もっと複雑で奥深いです。ここではざっくりと(でも長文)私の普段の施術の際にすることを書きます。

 

  ①望診(見る)

・・・眉間と尺部(前腕内側部)の色

 

★五色→青、赤、黄、白、黒のどれに当たるか。つやのあるなしも見ます。

 

五行説のお話のところに出てきました五臓を思い出してください。

★五臓→肝、心、脾、肺、腎

でしたね。五色を見たとき、青なら、肝の変動かな、というわけです。

 ここではまだ、虚か実か(足りないから補うのか、余分だから取り除くのか等)は保留です。肝に関係ありそうだな?くらいです。まあでも眉間や腕が青一色ということはないので、白ベースで青っぽいな?とか、黄色っぽいな?とか、大体です。

生まれつき私の目と目の間、鼻の付け根あたりに、小さな青筋みたいなものがあるのですが、よく親戚や知らない大人に、カンの強い子どもだな?と言われました。疳の虫のカンでしょうか。

言われてみれば小さい頃はよく大声で泣きわめいていた記憶があります。

 

②聞診(聞く・嗅ぐ)

・・・声と匂い

 

★五音→角、徴、宮、商、羽

高く澄んだ声は徴(ち)

高く澄んでいるが一音階低いのは羽

低く濁る声は宮か商

高くも低くもない声は角

 

 低めで響かない声の人は脾か肺が関係しているかな?と当たりをつけます。

 

★五声→呼、言(笑)、歌、哭、呻

呼びつけたり叫ぶような話し方は呼

ブツブツ独り言をつぶやくような話し方は言

または大声で笑いだすのは笑

歌うような話し方は歌

悲壮な泣き声を出すような話し方は哭

弱々しい呻き声を出すのは呻

 

ここがつらいんですぅ~と呻くように訴えてくるのは腎か、という感じです。

声のはり、つや、五音と五声の調和、また普段と病気の時の違いなども考えます。

 

★五香→臊、焦、香、腥、腐

臊は油くさい

焦は焦げくさい

香はいい匂い

腥はなまぐさい

腐は腐れくさい

五香はわかりづらく、あまり考えていません。

 

 

③問診(質問する)

・・・主訴、病歴、生活の様子、食欲、便通、睡眠、月経などについて聞きます。

その他この経絡の変動かなと思ったらそれに関連する質問を主に聞いていきます。

 

④切診(触る)

・・・切経、腹診、脉診

 

切経は、さすったり少し押したりします。

訴えのあるところと、経絡に沿って経穴を目標に、陥下、硬結、熱さ冷たさ、圧痛、知覚過敏などを見ます。

 

腹診は、不快感を与えないように、強く押したりはせず、しかも気色悪くないように、とくに気をつけます。

 

病のないお腹は硬結、緊張、陥下、動悸が触れない。

ふかしたてのまんじゅうみたいなのが良いお腹。

 

「虚」は、冷え、痩せ、しびれ、温めると心地よい、皮膚乾燥、力がない、押して気持ち良い。

 

「実」は、腫れている、鼓の革みたいに張っている、熱感、冷やすと心地よい、押すと痛み不快。

「旺気実」は皮膚がなめらかで張りがあり盛り上がる。

「邪実」は表面が虚していて、軽く押すと深部に硬結があり、痛む(按じて牢)。

 

ということを考えながら、部位ごとに確認します。

 

臍より上が大腹、下が小腹。

胸の真ん中、胸骨下端の剣状突起にある鳩尾穴から臍との中間にある中脘穴の少し上までを心の診所。

右季肋部が肺の診所。左季肋部はその比較部位。

臍を中心にその下1寸の陰交穴から中脘穴の上までを脾の診所。

臍の左下、側腹部が肝の診所。右も肝。

臍下1寸の陰交穴から恥骨上際に至る部を腎の診所。

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脉診は、六部定位脉診(ろくぶじょういみゃくしん)をします。

脉診の指の当て方

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脉の見方

 ①中脉を見つける…指を静かに沈めて、3本の指に最も平らに脉の触れるところ。

②陰経の脉を見る…中脉からさらに指を沈める。

③陽経の脉を見る…中脉から指を浮かせて脉が消える一歩手前。

 

六部定位脉診には、状診比較脉診があります。

 

脉状診

指を当てる場所は上の図をご覧ください。脉状診は経のことは考えず全体を見ます。

 

施術の手技・手法を決めます。とても複雑で奥深いものですが、まずは六祖脉(浮沈、遅数、虚実)を見ます。

 

浮沈

脉が浮いていれば浅いところに鍼を打ちます。

沈んでいれば少しだけ鍼の角度をつけて深めにします。

 

遅数(ちさく)…

脉が遅ければゆっくりめに鍼を打ちます。少し置いたりします。

早ければ、即刺即抜します。

 

虚実

脉が強いか弱いかを見ます。

 

は、弱くかすかに手に触れる脉です。生気が足りないので、補法中心。

 

 

は、旺気実邪気実があり、強く硬い脉です。

 旺気実…経絡の歪みにより現れ、丸みと艶のある強い脉。輸瀉(気を動かして平らにする)により調和させる。

 邪気実…外邪や内傷といって何らかの病の原因によって余計なものが入ってきてしまった実。強く荒々しい脉。

 

邪気実には実邪虚性の邪がある。

 実邪には瀉法をする。

 虚性の邪は生気と潤いのないもの。補中の瀉法をする。

 

 

 比較脉診

上図の、青で囲まれたものが陰経、赤で囲まれたものが陽経です。

 

どの経を補ってあげたいかを考えながら見ます。最も弱いところを虚、強いところを実とします。

 難経六十九難により「虚すればその母を補い、実すればその子を瀉す。先ず補ってのちこれを瀉すべし」という大原則があります。

虚した経が2つ並んでいれば、その子に当たる経を主証とします。

たとえば、腎と肺が虚していれば、腎は肺の子なので、腎虚となります。

 

 

以上、簡単に(長文ながら)四診法をご説明しました。

これらにより総合的に考え、主証を決定します。

証決定は、陰陽五行論、陰主陽従、補法優先という原則に基づきます。